【夜勤の急変対応・完全保存版】AEDと心肺蘇生。暗闇の中で命を繋ぐための「もしも」の手順と、子供への対応

夜勤帯に最も恐ろしいのは、利用者さんの「急変」です。
日中と違い、スタッフの人数は少なく、医師や看護師がすぐに駆けつけられないこともあります。

「目の前で利用者さんが倒れたら、自分は何をすべきか」
夜間の急変対応において、AED(自動体外式除細動器)の使用と心肺蘇生(CPR)の知識は、命を左右する極めて重要なスキルです。また、相手が高齢者(大人)なのか、面会に来ていた子供(小児)なのかによって、対応は全く異なります。

今回は、夜間に急変が起きた際の具体的な行動手順、夜間特有の観察のコツ、そしてAEDの正しい使い方と子供への対応について、網羅的に綴ります。

1. 夜間の巡回で見逃してはいけない「急変のサイン」

夜間の急変は、日中のそれと比べて発見が遅れがちです。静かな環境だからこそ、五感を研ぎ澄ませて「いつもと違う」変化を察知することが何より大切です。

  • 呼吸の異常:いびきがいつもと違う、呼吸が浅い・速い、無呼吸がある(睡眠時無呼吸症候群の可能性も)。
  • 顔色の変化:青白い、土気色、唇が紫色(チアノーゼ)。
  • 冷や汗:額や手足が異常に冷たく、汗をかいている。
  • 意識の混濁:呼びかけへの反応が鈍い、うわ言を言っている、手足を不自然に動かしている。
  • 体位の異常:ベッドの端に寄っている、うつ伏せで苦しそうにしている。

これらのサインに気づいたら、すぐにバイタルチェックを行い、看護師やリーダーに報告します。

2. 夜間に正確な「バイタルチェック」を行うコツ

夜間は暗く、利用者さんも寝ているため、バイタルの測定には工夫が必要です。

  • 呼吸の確認:胸とお腹の動きをじっと見ます。布団を少し下げて、動きが見やすいようにすると良いでしょう。
  • 脈拍の確認:手首(橈骨動脈)や首(頸動脈)に指を当てます。暗い場合は、スマホのライトを直接当てず、少し上から照らして影で確認すると眩しくありません。
  • 体温の確認:手足の先に触れ、冷たすぎないか、逆に熱すぎないかを確認します。額に手を当てて熱感を確認するのも有効です。
  • 血圧測定:血圧計のマンシェットを巻く際、寝ている利用者さんを起こさないように、静かに行います。

3. 急変を発見した時の「初期行動」

もし、利用者さんの意識がなく、呼吸がない(または異常な呼吸)と判断した場合、以下の手順で行動します。

【ステップ1:応援を呼ぶ】
一人で解決しようとせず、「〇〇さんが倒れた!誰か来て!」と大きな声で叫びます。夜間は防音性の高い施設もあるため、ナースコールやインカム、携帯電話を使って応援を要請します。

【ステップ2:意識と呼吸の確認】

  • 肩を軽く叩きながら「〇〇さん、大丈夫ですか?」と大声で呼びかけます。
  • 反応がなければ、呼吸を確認します。胸とお腹の動きを10秒以内で見ます。

【ステップ3:死戦期呼吸(あえぎ呼吸)の見極め】
これが一番判断に迷うポイントです。「呼吸があるように見えるが、実は心停止」という状態があります。

  • 死戦期呼吸の特徴:口をパクパクさせている、肩で息をしている、いびきのような異常な音を立てている。これらは「呼吸なし」と判断し、直ちに心肺蘇生を開始してください。

【ステップ4:119番通報とAEDの手配】

  • 応援のスタッフが来たら、「119番して!」「AEDを持ってきて!」と具体的に指示を出します。
  • 自分一人しかいない場合は、スマホのスピーカーで119番通報しながら、心肺蘇生を開始します。

4. 119番通報のコツ(夜間・焦っている時こそ)

夜間の119番通報は、冷静さを保つのが難しいですが、以下のポイントを押さえましょう。

  • 住所を正確に:「〇〇県〇〇市〇〇町…」と、施設の住所をゆっくりはっきり伝えます。夜間は暗くて住所がわからないこともあるので、電話の近くに住所を貼っておくと安心です。
  • 状況を伝える:「〇〇歳の男性(女性)が意識を失い、呼吸がありません。心肺蘇生を開始しています」と伝えます。
  • AEDの有無を伝える:「AEDを準備しています」と伝えると、救急隊の準備がスムーズになります。
  • 電話を切らない:救急隊が到着するまで、電話を切らずに指示を仰ぎます。

5. 心肺蘇生(胸骨圧迫)の基本と「子供との違い」

呼吸がない、または異常な呼吸の場合は、直ちに胸骨圧迫を開始します。
ここで最も注意すべきは「大人と子供で圧迫の強さが違う」ということです。

  • 【大人(高齢者)の場合】
    • 体位:固い平らな場所(床など)に仰向けに寝かせます。ベッドの上では柔らかすぎて圧迫が効かないため、可能なら床に下ろします。
    • 方法:両手のひらを重ねて、胸の真ん中を押します。
    • 深さとテンポ:「強く(約5cm)、速く(1分間に100〜120回)、絶え間なく」。テンポの目安は「アンパンマンのマーチ」や「Stayin’ Alive」など。
  • 【子供(小児)の場合】※大人と同じ対応はNG!
    • 子供は体が小さく臓器や骨が柔らかいため、大人と同じ強さで圧迫すると内臓を傷つけてしまいます。
    • 深さ:胸の厚みの約3分の1(約4cm)を目安にします。
    • 方法:両手だと強すぎることがあるため、片手(または両手の指先)で行います。
    • 1歳未満の乳児:2本の指で胸骨圧迫を行います。

6. AEDの使い方と「子供への対応」

AEDは、心臓がけいれん(心室細動)を起こしている時に、電気ショックを与えて正常なリズムに戻す機械です。「電気ショックが必要ない時は作動しない」安全設計になっているので、迷わず使いましょう。

【大人へのAEDの手順】

  1. 電源を入れる:フタを開けると自動的に電源が入り、音声ガイドが流れます。
  2. パッドを貼る:服を脱がせ、「右の胸の上」と「左の脇腹」にパッドを貼ります。(夜間は体をタオルで拭き、乾かしてから貼ります)
  3. 解析中は離れる:音声ガイドに従い、利用者さんから手を離します。
  4. ショックボタンを押す:電気ショックが必要と判断された場合、ボタンを押します。
  5. すぐに胸骨圧迫を再開:救急隊が到着するまで続けます。

【子供へのAED使用の注意点】

  • 小児用モード・パッドの使用:必ず「小児用モード」に切り替えるか、子供用の小さなパッドを使用してください。
  • 子供用パッドがない場合:大人用パッドしかない場合は、「右の胸の上」と「背中の真ん中」に貼ります(前と後ろから心臓を挟み込むイメージ)。
  • 「何もしないよりは使う」:大人用パッドを子供に使うことは電気エネルギーが強すぎるリスクがありますが、「何もしないよりは使った方が命が助かる可能性が高い」ため、迷わず使用してください。
  • 1歳未満の乳児:小児用パッド(または大人用パッドを前後に貼る)を使用します。小児用の機能がない場合も、やはり「何もしないよりは使う」という判断になります。

7. 夜勤帯特有の「連携」の難しさ

夜間は、日中と比べて他職種との連携が取りにくいという課題があります。

  • あらかじめ「誰が何をするか」を決めておく:夜勤の申し送り時に、「急変時は〇〇さんが119番、△△さんがAED、私は胸骨圧迫」と役割を確認しておく。
  • 連絡先の確認:家族の連絡先、嘱託医の連絡先、夜間対応の医療機関の連絡先を、夜勤前に必ず確認しておく。

8. 救急隊が到着したら

救急隊が到着したら、以下の情報を簡潔に伝えます。

  • 意識発見時の状況:いつ、どこで、どんな状態で発見したか。
  • これまでの対応:心肺蘇生をいつから行っているか、AEDのショックは何回行ったか。
  • 利用者さんの情報:年齢、氏名、かかりつけ医、持病、服用中の薬、アレルギーなど(お薬手帳や介護記録を渡すとスムーズです)。

おわりに

急変対応は、一度経験するとトラウマになることもあります。
しかし、適切な手順を踏み、チームで連携できれば、救える命は確実に増えます。

「もしも」の時、慌てずに動けるように、日頃からAEDの場所を確認し、胸骨圧迫の練習をしておくこと。
そして、「相手が大人なのか、子供なのか」によって対応が変わるということも、頭の片隅に置いておいてください。

夜の現場で、利用者さんの命を守るのは、あなたの冷静な判断と、日頃の備えです。
この書架が、万が一の時にあなたの力となり、大切な命を繋ぐ一助となれば幸いです。

コメント

Verified by MonsterInsights
タイトルとURLをコピーしました