介護の現場において、夜勤は最も緊張感が高く、体力を消耗する業務です。
日中の賑わいが消え、静まり返った施設の中で、限られたスタッフだけで利用者さんの命を守らなければなりません。
「夜勤明けの疲労が取れない」「夜間の巡回でヒヤリとすることがある」「利用者さんの不穏が怖い」――そんな悩みを抱える方は少なくありません。
今回は、夜勤帯のリスク管理と、長く夜勤を続けるための「自分を守る知恵」について綴ります。
1. 夜間の「観察眼」を磨く
夜間は、日中のスタッフと入れ替わるため、「いつもと違う」変化に気づきにくいという特性があります。
だからこそ、巡回時の「五感」を使った観察が重要です。
- 呼吸の音とリズム:いびきがいつもと違う、呼吸が浅い、苦しそうな音がしないか。無呼吸になっていないか。
- 皮膚の温度と色:手足が冷たすぎないか、顔色が青白くないか、汗をかいていないか。
- 体位と寝相:苦しそうな体勢になっていないか、ベッドの端に寄っていないか、落ちそうになっていないか。
- におい:部屋の中に異臭(排泄物、腐敗臭、ガス漏れなど)がないか。
特に、「睡眠薬や向精神薬を服用している方」「脱水傾向にある方」「発熱がある方」は急変リスクが高いため、巡回の頻度を上げるなどの配慮が必要です。
2. 「不穏」へのアプローチ
夜間、利用者さんが急に起き出してしまったり、大きな声を出したりする「不穏」は、夜勤スタッフにとって大きなストレスです。
しかし、不穏には必ず「理由(原因)」があります。
- 環境の変化:暗闇が怖い、知らないスタッフがいる、トイレに行きたい。
- 身体的不調:痛み、かゆみ、発熱、尿意・便意、口渇。
- 認知症の症状:夕暮れ症候群(夕方から夜にかけて落ち着かなくなる)、見当識障害。
「どうしたの?」と問い詰めるのではなく、「〇〇さん、こんばんは。どうされましたか?」と穏やかに声をかけ、手を優しく握るなどスキンシップをとりながら、安心してもらうことが第一です。
「トイレですか?」「お水飲みますか?」と、具体的な選択肢を提示すると、スムーズに納得してもらえることがあります。
3. 「転倒」を防ぐ環境づくり
夜間の転倒は、骨折や入院に繋がる重大な事故です。
日中以上に、「動線の安全」を確認します。
- ナースコールの位置:手の届く範囲にあるか。コードが体に絡まっていないか。
- ベッドの高さ:一番低い位置(ローギア)になっているか。
- トイレへの動線:足元に障害物がないか。夜間用の足元灯(フットライト)は点いているか。
特に、「自分でトイレに行こうとするが、ふらつきがある方」には、巡回時に「トイレに行きたいですか?」と声をかけて、こちらから誘導する(トイレ誘導)ことで、転倒リスクを大幅に減らせます。
4. 「急変」時の初期対応
もし、夜間に急変(心肺停止、意識消失、けいれん、呼吸困難など)が起きた場合、「一人で抱え込まない」ことが鉄則です。
- すぐに応援を呼ぶ:ナースコールや電話で、他のスタッフ(看護師や夜勤リーダー)を呼びます。自分一人で判断しようとしないこと。
- バイタルチェック:意識、呼吸、脈拍を確認し、看護師に正確に伝えます。
- 記録と報告:何が起きたか、どう対応したかを記録に残します。
5. 夜勤明けの「自分を守る」ルーティン
夜勤は体への負担が大きいため、「明けたあとの過ごし方」が重要です。
- 朝日を浴びる:帰宅時、カーテンを開けるか、少し外を歩いて朝日を浴びることで、体内時計がリセットされます。
- シャワーでスイッチを切る:帰宅後は熱すぎないシャワーを浴び、体を温めつつリラックスします。
- 昼過ぎまでの仮眠:帰宅後すぐに寝るのではなく、少しだけ家事をしてから、昼過ぎまでしっかり眠るのがおすすめです。(睡眠の質を確保するため)
- カフェインのコントロール:夜勤中、眠気覚ましにコーヒーを飲むなら、明け方(朝4時以降)は控えるようにします。そうしないと帰宅後眠れなくなります。
おわりに
夜勤は、静かで、時に孤独な時間です。
しかし、その静かな時間に利用者さんの命を支えているのは、あなたの「観察眼」と「優しさ」です。
無理をしすぎず、自分自身の体調を一番に考えてください。
「夜勤を乗り切った」という小さな達成感が、明日のあなたの力になります。
この書架が、夜の現場で奮闘するあなたの、少しでも心の灯りとなれば幸いです。

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